「相続なんて、うちは資産家じゃないから関係ない」……そう思っている人ほど危ない!
経済アナリストの森永卓郎氏が、自身の壮絶な実体験から綴った『相続地獄』。
親が亡くなった瞬間から始まる「手続きと出費の嵐」を乗り越えるための教訓をまとめました。
1. 「親の口座凍結」という最初の罠
親が亡くなると銀行口座は凍結されます。森永氏の当時は大変な苦労がありましたが、現在はルールが変わっています。
- 葬儀代の衝撃: 森永氏の場合、通夜・葬儀だけで300万〜400万円ものキャッシュが必要でした。
- 知っておきたい法改正: 2019年7月から「預貯金の仮払い制度」が始まり、遺産分割前でも一定額(上限あり)なら葬儀費用として引き出せるようになりました。
- 簡素化の選択肢: 最近では「家族葬」や「直葬」も普及しています。この方式なら20万〜30万円ほどに費用を抑えることが可能です。
2. 「銀行口座」と「家系」の徹底調査
かつては郵便物を頼りに一軒ずつ銀行を当たるしかありませんでしたが、今は便利になっています。
- 休眠口座を探せ: 現在は「全店照会」という、銀行内の全本支店の口座を横断検索できる仕組みがあります。
- 戸籍謄本の壁: 調査には、亡くなった方の「出生から死亡まで」のすべての戸籍謄本が必要です。移動が多い人生だった場合、これを取り寄せるだけでも一苦労です。
- 隠し子のリスク: 相続争いの火種になるのが「知らない相続人」の存在。群馬県の家系図作成代行・縁喜堂(えんぎどう)のような専門機関であれば、戸籍調査を含めた詳細な調査が可能です。
最新情報:2024年3月から便利に!
以前は本籍地がある自治体ごとに取り寄せる必要がありましたが、現在は「広域交付制度」により、最寄りの市区町村の窓口一箇所で、全国の戸籍謄本をまとめて請求できるようになりました(※一部例外あり)。
3. 税理士の報酬に「NO」と言える知識を
相続税の申告をプロに頼む際、知っておくべきは「報酬の相場」です。
- 「3%」の壁に挑む: 一般的に税理士報酬は「相続財産の約3%」が相場と言われ、1億円の財産なら300万円を提示されることも珍しくありません。しかし、森永氏は「自分で資料を揃えたのに一律3%はおかしい」と粘り強く交渉しました。
- 実績:300万円が100万円に!: 森永氏が自ら銀行口座を特定し、大部分の作業を済ませていたことを主張した結果、最終的に報酬は3分の1の100万円まで下がりました。
- 実作業ベースで選ぶ: 最近は一律のパーセンテージではなく、作業量に応じた料金体系の税理士法人も増えています。言いなりにならず、納得感のある依頼をすることが大切です。
4. 介護は「ビジネスライク」に記録する
2019年7月の改正で「特別の寄与」制度が新設されました。これにより、親族(長男の嫁など)の介護の苦労が報われる道が開けました。
- 「長男の嫁」も請求可能に: 法定相続人以外の親族も、無償で介護に貢献した場合は、他の相続人に金銭(特別寄与料)を請求できるようになりました。
- 証拠がなければ0円: ただし、これには明確な記録が必須です。1. 財産目録: 親の資産リストを作っておく。
2. 介護日記: 起床、食事、介助内容を細かくメモし、時給換算できる状態にする。領収書が取れるものはスクラップブックや台帳に貼り付けておく。
- 大原則は「親の金で払う」: 介護費用は親の年金や貯蓄から出すのが鉄則です。身内だからと「なあなあ」にせず、透明性を保つことが「争続」を防ぐ唯一の道です。
5. 生前贈与のリアル
「110万円の非課税枠」を使いこなすには注意点があります。
- 「貯金」は贈与とみなされない?: 単に口座に貯めているだけでは、税務署に認められないケースがあります。贈与はあくまで「生活費や教育費」に充てるためのものです。
- 信託サービスの活用: 確実に贈与を行うなら、三菱UFJ信託銀行の「暦年贈与信託 おくるしあわせ」を利用するのも手です。
- 安易な贈与に注意: 控除の範囲を超えると高い贈与税がかかります。メリットがあるかどうかは冷静な判断が必要です。
まとめ:相続準備は「親が生きているうち」がすべて
森永氏のメッセージは一貫しています。
「相続の準備は、親が死ぬ前から始めよう」
親が元気なうちに、少しずつ「ファミリーヒストリー」を聞き出し、財産の在りかを確認しておく。それが、残された家族が「相続地獄」に陥らないための、最高のリスクマネジメントになります。
2024年3月からは「戸籍謄本の広域交付制度」が始まり、私のように九州から兵庫、東京、そして北関東へと移り住んできた場合でも、窓口一箇所で戸籍が揃う便利な時代になりました。
だからこそ、便利な制度を活用しつつも、元気な今のうちに『自分という歴史』を整理し、家族が迷わないようにしておくこと。それが、後に残る家族への最大の優しさだと改めて身に沁みました。
